駅近くの店に立ち寄ったその時。 店の隅で漫画を読んでいる人物が目に止まった。 あの男に似ている。 脳裏に焼き付けていた男の顔とほぼ重なった。 「見当たり捜査」が実を結ぼうとしていた。 (さいたま放送局記者 粕尾祐介) ずらりと並ぶ顔写真。駅や交番などで見たことがある人も多いだろう。 全国で指名手配を受けた容疑者だ。その数およそ600人。 こうした人物を専門に追う刑事がいる。 顔写真を頼りに、都会の雑踏で同じ「顔」を見つけ出す「見当たり捜査」。 目の前に現れる保証はない。 ごくわずかな確率にかける刑事には流儀があった。 埼玉県警察本部の地下にある1室。 ドアが開き、私(記者)の前に、1人の男性が姿を現した。 フリースにジーンズというラフな格好。 そして、顔を見ると実に温和な表情だった。 凶悪事件の容疑者などを見つけ出す刑事と聞き、眼光が鋭く、こわもての「デカ」だろうと勝手に想像していたので少