野田首相はニューヨークで開かれた国連総会に出席して「世界の平和と安定、繁栄の基礎となる法の支配は紛争の予防と平和的解決のため不可欠であり、一層強化すべきだ」と演説し、領土紛争を国際司法裁判所(ICJ)で解決することを提唱した。国名はあげていないが、これは日本がICJに提訴する方針を表明している竹島の領有権問題のことだろう。 法の支配(rule of law)というのは、国家権力が法に従うという近代国家の原則だ。この場合の法とは憲法を意味するというのが通常の解釈だが、広い意味では慣習法や自然法とも解釈できる。恣意的な国家権力の行使を許さず、法によって国家を拘束する英米法の概念だが、最近では法治国家の普遍的な原則と考えられている。 しかし国際社会に、法の支配はあるのだろうか。たとえば2010年の事件のように、中国の漁船が尖閣諸島の周囲の領海に侵入して、海上保安部がその船を拿捕して船員を拘束した