(また、適当なことを書きおって。。人の気も知らんで。。) 男はそう思いながらノートパソコンのブラウザを忌々しそうに閉じた。 ネットニュースの記事には自分があたかも冷酷非道のヤクザ者かのように書かれており、その下のコメント欄には自分を中傷する「ブラック経営者は今すぐ死ね」「二度とこの会社は使わない」など自分では考えもつかないようなありとあらゆる罵詈雑言が並んでいた。 (自分はいい。それより、、、) 思案を巡らせようとしたが、総務の女性の声に思考をさえぎられた。 「川口副社長。会長がお呼びです。」 「・・・早い。。な。。」 男は椅子の上にスーツを着たまま胡坐を書くのが癖なのだが、彼を呼ぶ電話を知らせるその声を聴き終わる前には靴に足を突っ込んでいた。 靴の踵は柔らかくつぶれてしまっていて紐は緩く結んだままだ。 自分が現場で引越し作業員だったときから靴を脱ぐにも履くにも手を使わずやってきたクセで靴