美容室はおもしろい。めぐりにはいろいろな髪型の客たちが、鏡に向かって座っている。それもふつうの意味でいうところの「髪型」とはちょっと違う。なん十個もありそうなカーラーを巻かれて頭から壺のような機械を被っている人や、べとべとの薬剤をつけられたうえに髪の毛を銀紙で挟まれている人。濡れた髪を櫛でぺっとりと撫でつけられて、そのままの状態で待たされている人。どれも街中ではおよそ見かけることのない髪型ではあるけれど、恥ずかしがっている人なんて誰もいない。鏡の前で(だから、自分がどんな髪型をしているかわかるはずだ)ゆっくりと雑誌のページをめくったりしてすましている。美容室は誰かの「変身中」が見られる特別な場所だ。 「変身中」の姿を見ることは楽しいし、すこしだけ安心する。普段はばっちり髪型を決めているおしゃれな人でも、そのパーマやヘアカラーのために、こんなに面白い姿になっている瞬間があるのだと思うと、いつ