昼下がり、神保町を切り上げて半蔵門線に乗りこみ、表参道で銀座線に乗り換えて、渋谷で下車。丸ノ内線の四ツ谷駅の地上に出る瞬間や、同じく丸ノ内線の御茶ノ水駅に入る直前に聖橋のふもとの神田川の脇に出る瞬間とおなじように、終点の渋谷駅に到着する直前の銀座線がトンネルから高架に出る瞬間もいつも胸躍る。 荻原二郎《1939年8月9日 東京高速鉄道渋谷駅》、荻原二郎著『昭和10年東京郊外電車ハイキング(下)』RM LIBRARY 71(ネコ・パブリッシング、2005年7月)より。 ゾロゾロと人びとが改札の外へと吐き出されていったあとの閑散としたホームで、表参道方面の地下線路をのぞむ。右は普請中の東急文化会館の跡地で、左が宮益坂。青山の高台は地下線路で、銀座線の終点・渋谷駅は山手線の上の高架に位置する。すなわち、まっすぐ進むとおのずと線路のさきは地下線路となり、渋谷は文字どおりに「谷」だということを実感す