東京から新大阪を目指して東海道新幹線の「のぞみ」に乗っていると、風の速さで過ぎてしまう通過駅の存在を意識することはほとんどない。だいいち、「のぞみ」が停まらないとはいえ、やはり新幹線。静岡なり浜松なり小田原なり、それなりに知名度の高い駅が多い。だから、東海道新幹線にナゾの通過駅などないのだ……と思っていた。ところが、ひとつあった。三河安城駅である。 三河安城駅と聞けば、ピンとくる人も多いだろう。「のぞみ」が名古屋駅に近づいてくると流れる車内放送――「この電車は三河安城駅を定刻通りに通過しました。次の名古屋駅にはおよそ9分で到着します……」というアレだ。名古屋で降りるときはこの車内放送を聞いて、「ああ、そろそろだな」とリクライニングをもとに戻して荷物をまとめて降りる準備をする。だから三河安城駅は「のぞみ」ユーザーからの知名度がかなり高い。