読み終えたら、ふと、小鳥を飼いたくなった。小説家の小川洋子さんと脳研究者の岡ノ谷一夫さんが言語について語り尽くす本だ。引用したくなるような名言名句がちりばめられ、大胆な展開に魅力を添える。 言葉を使う動物はヒトだけである。なぜ言語を操る能力が芽生えたのか。あまりに不連続な飛躍。動物たちに言語の原型を探すことはできないだろうか。 本書では、鳥の「歌」に起源を求める。実際、ヒトにとっての協和音は、鳥にとっても協和音らしい。響きの美意識は種を超えて共有されえるのだ。とりわけジュウシマツは歌を学ぶ珍しい動物である。こうした動物たちが「無意味な歌をうたう長い時代を経て、文法を進化させた」と唱える。 さて、ひとたび言語を獲得すると、もはや、その影響は無視できない。社会性の強い動物は他者を通じて自己意識を有するが、これは言語によって顕在化し、定着する。だから「言葉が人間を作った」と考えることもできる。