たくさんの作品を世に送り出しているプロ作家の皆さんにも、 もちろん最初の1冊はあります。 処女作を出版した経緯を中心に、出版にまつわるお話を伺いました。 実体験を通してつかんだテーマが導いた、作家への道 ルポルタージュ・コラムの名手 上原隆さん 自尊心の危機から生まれたテーマ ——上原さんは、市井の人に取材した独特のルポルタージュ・コラムをずっと書き続けていらっしゃいます。そもそも、このようなスタイルで書きはじめたいきさつは? 上原:私が最初に書いたのは『「普通の人」の哲学』(毎日新聞社)という本で、これは鶴見俊輔論です。その次が『上野千鶴子なんかこわくない』(毎日新聞社)っていうフェミニズムの本。フェミニストにやられる男の話ですね。 この頃の自分はいっぱしの学者気分で、雑誌『思想の科学』の編集委員に呼ばれて行って、毎月一回の編集会議に参加していました。そこで哲学者の鶴見俊輔さ