2019年のベストSFランキング第1位の伴名練『なめらかな世界と、その敵』より斜線堂有紀さんによる解説を一部公開します。心の隔たりと繋がりをめぐる奇跡の傑作集。 文庫『なめらかな世界と、その敵』解説より一部抜粋(文:斜線堂有紀) 私は物語というものが好きである。それは、自分とは違うものの見方を味わって噛み砕き、自分を保ちながら他の人生を生きられるからである。ある意味で私は物語の中の隔たりを愛しているのだ。それでいて、私は物語中の人間と人間が強い感情を交わし合う物語も好きだ。愛だろうと憎しみだろうと、どんどん投げ合って反響し合ってほしい。 そんな私が伴名練作品に強く惹かれるのは当然だろう。隔たりの寂しさと、それが故に繋がっていく感情は、私の理想とする物語なのだ。なので私は、伴名練作品を読むといつも悔しい。 小説の上手さにおいては悔しいが、その才能がどんどん広がり、小説執筆だけに限らず発展して