大人の映画を見た。「アメリカン・ギャングスター」は今年のベスト3に入れたい傑作だ。 なにが大人かといえば、これは麻薬売り対刑事という図式だが、勧善懲悪のないグレーゾーンの世界が濃厚に描かれていたことだろう。徹底的にそぎ落とされた脚本が、説明過多な作品ばかりの現代では心地いい。(つまりボヤボヤしていると話がわからなくなる恐れがある) やはりまず第一に、70年代NYの黒人麻薬王フランク・ルーカスを演じたデンゼル・ワシントンがすばらしい。本来なら麻薬売りなんぞ共感しにくい悪党なはずだが、魅力をぷんぷん振りまいて観客を魅了する。警察組織となれあい、混ぜ物ばかりの粗悪なヘロインがはびこる中で、度胸一発タイの奥地まで入りこんでは純度100%のハイクオリティなヘロインをフランクは買いつける。「よい品をより安く」という、まるでダイエーの中内会長のような流通革命を巻き起こすのだ。 もちろんそれはより社会に害