はじめに この本はオブジェクト指向技術を利用してソフトウェア開発することを目指す技術者および管理者のために書かれた本です。プログラムのコードや難しい数式などを排除してあり,図と文章によって基本概念や適用技術を平易に解説しています。オブジェクト指向技術を数学(形式)ぬきで探求する試みといえるでしょう。 本来,オブジェクト指向技術を,瓶から瓶へ水をもらさぬように,正確に伝えるには,数学(型理論)を必要とします。数学的形式化が行われていないと,オブジェクト指向で表面化する問題の議論がかみ合わず空転することが多いからです。あの時はこうだっだ,この時にはああだったと経験則の披露になりかねないのです。やはり何かしらの形式化は必要でしょう。しかし,数学的形式化の苦しみときたら並大抵ではありません。特に,後述するインヘリタンス(継承) や並列などが絡んだあかつきには残酷なのです。私だけかもしれません