将棋の第61期王位戦の第1局で木村一基王位(手前右)と対局する藤井聡太七段(同左)=1日午前、愛知県豊橋市のホテル(日本将棋連盟提供) 王位戦開幕の朝は、前夜の荒天の名残のような小雨だった。対局場はホテル内の結婚式場などに使われる「音楽堂」。十畳の畳が運び込まれ、開放感のある和室が設営された。 午前8時35分、先に現れたのは挑戦者の藤井聡太七段。和服でのタイトル戦は6月28日の棋聖戦第2局に続いて2回目となる。今回の王位戦のために新調した和服は、象牙色の着物に、グレーの羽織を合わせた。連戦の疲れも見せず、さわやかな若さの中に上品さを漂わせた。無地に見える羽織には「万筋」と呼ばれる、非常に細かい縦じまが入っている。静かな所作で下座につくと、じっと王位の到着を待った。 ややあって木村一基王位が入室した。紺の着物に濃紺の紋付き羽織で、待ち受ける王者の風格を感じさせる。一礼の後、木村王位が駒袋のひ