ブックマーク / hiko1985.hatenablog.com (7)

  • 野木亜紀子『アンナチュラル』1話 - 青春ゾンビ

    うおー。思わず声が出てしまうほどにおもしろいではありませんか。脚、役者、演出、編集、劇伴、衣装・・・あらゆる要素が90点越えを叩き出す超優等生の登場である。脚は野木亜紀子。『空飛ぶ広報室』(2013)、『重版出来!』(2016)、『逃げるは恥だが役に立つ』(2016)などで高い評価を得た、原作もののスペシャリストがついにオリジナル脚テレビドラマを手掛けるということで、期待値は高かったのですが、その予想の遥か上をいく完成度。ここ20年のテレビドラマの軌跡と叡智の結晶というような感触を覚える。そう考えると、”遺体解剖”という作品のモチーフはあまりにもはまっている。野木亜紀子は相当のテレビドラマフリークであると聞く。 テレビドラマの過去のアーカイブス(≒死体)を暴き出し、「このドラマは何故おもしろいのだろう?」というのを徹底的に究明し、未来へと繋げた成果が、この『アンナチュラル』なのであ

    野木亜紀子『アンナチュラル』1話 - 青春ゾンビ
    torakono
    torakono 2018/02/12
  • 新しい地図『72時間ホンネテレビ』 - 青春ゾンビ

    毎日みんなで口にするのは「ああ あいつも来てればなぁ」って 当に僕も同感だよ それだけが残念でしょうがないよ スチャダラパー「彼方からの手紙」 そこに”いない”と感じるってことは、実はむちゃくちゃ”いる”ということなのだ。『72時間ホンネテレビ』は3人としてスタートを切る番組ではなく、どこまでも5(6)人を諦めない、という意志のように思えた。ちなみに、上に引用したスチャダラパーの「彼方からの手紙」という曲はこう締めくくられる。 ぼくはすべてを把握した ここにこなけりゃぼくは一生 わからずじまいで過ごしていたよ あんがい桃源郷なんてのは ここのことかなってちょっと思った 君もはやく来たらと思う それだけ書いて筆を置く まさに桃源郷のような3日間だった。もちろん、72時間の内、8割方は既存のテレビ番組の冴えない企画の焼き増しで、「地上波放送じゃできない」という謳い文句は決して適切ではない(地

    新しい地図『72時間ホンネテレビ』 - 青春ゾンビ
    torakono
    torakono 2017/11/11
  • 若林正恭『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』 - 青春ゾンビ

    星野源とオードリー若林正恭。この国の”生き辛さ”を抱える人々のか細き声を代弁してきたメディアスターだ。”人見知り”という自虐を武器に成り上がってきた2人だが、年齢を重ね、活躍のステージを上げていくにつれ、奇しくも共に”人見知り”を克服した旨の宣言をする。しかし、その語り口は大きく異なる。星野源の"それ"について語り出すと止まらなくなってしまうので、ここでは若林正恭の脱・人見知り宣言にフォーカスしてみよう。様々な場所でおもしろおかしく語っているのだが、比較的音が聞けるであろうラジオでは、以下のような意味合いのことを語っていた。 人見知りは若い子たちのもの 年齢を重ねた自分は、飲み会などで居心地の悪そうな若い子たちに、 気を遣っていかなくてはならない立場になった この語りからもわかるように若林正恭の抱える”生き辛さ”の視線は、個人を超え、広く社会に向けられ始める。若林は40歳を目前にして、ニ

    若林正恭『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』 - 青春ゾンビ
    torakono
    torakono 2017/08/08
  • 高橋敦史『ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』 - 青春ゾンビ

    夏の暑さに耐えかねたのび太とドラえもんが、無限にかき氷をべる為に、南太平洋に浮かぶ氷山に赴く。「大氷山の小さな家」(てんとう虫コミックス18巻)を導入にしているようだ。どこでもドアをくぐる前に、しっかりパーカーを羽織ってから氷山に向かうのび太の姿に驚いてしまう。半袖姿で氷の世界に現れ、「うぅ、寒い」と鼻水を垂らすといういうボケを一発かますのが、『ドラえもん』のマナーのようなもの。しかし、今作の主人公はあらかじめ上着を用意できるのび太。精神年齢が少し高めに設定されているのだろうか。しかし、監督がのび太にパーカーを着させたのはそんな理由ではない。タケコプターでの飛行シーンに目を凝らそう。繊細に風にたなびくのび太のパーカーのフード。衣服をたなびかせる為、つまり画面に”風”を吹かせる為に、のび太にパーカーを着せたのだ。実に宮崎駿的なふるまい。なるほど、監督の高橋敦史はジブリで『千と千尋の神隠し』

    高橋敦史『ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』 - 青春ゾンビ
    torakono
    torakono 2017/03/18
  • ティム・バートン『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』 - 青春ゾンビ

    バートンお得意のゴシック調のおどろおどろしいOPから一転、”フロリダ”というクレジットとともに、太陽が燦々と照りつけるビーチが牧歌的に映し出されるのには思わず笑ってしまう。主人公ジェイクが働くドラッグストアでのクラスメイトとの一連のやりとりを見るに、ティーンエイジャーの葛藤を描いた学園ドラマが展開されていくような予感に満ちているが、すぐさま画面はダークな質感を取り戻す。曇り夜空の下に現れる、どこか見覚えのある住宅風景に、ここでいう”フロリダ”というのは、つまりはあの『シザーハンズ』(1990)の舞台であるということに気づく。ハサミ男エドワードの孤独が、周りの同年代のこどもたちとうまく関係を築くことができないジェイクに重ねられる。であるから、今作もやはり”歪さ”を、”奇妙さ”を、”変わり者”を、優しく肯定する物語だ。その完成度はティム・バートンのキャリアにおいても、最高ランクに位置するのでは

    ティム・バートン『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』 - 青春ゾンビ
    torakono
    torakono 2017/02/18
  • 坂元裕二『カルテット』5話 - 青春ゾンビ

    30分の放送を経て、やっとのことタイトルバックが現れる。その直前に披露されるのはカルテットによる実に幸福な路上演奏だ。1話のオープニングを思い出したい。路上でチェロを独奏する世吹すずめ(満島ひかり)に足を止めるものはいなかった。誰からも耳を傾けられることのなかったその音色が、彼女の運命共同体であるカルテットとして奏でられると、かくも”世の中”に浸透する。しかし、このシーンがほとんど夢のような鮮度でもって撮られているのが気になる。演奏するカルテットの表情、演奏に手拍子で称える人々。あまりの多幸感に、えもすれば覚めることへの切なさすら伴ってしまう、あの”夢”のような鮮度である。たまたま居合わせたノリのいい外人の煽りを端にして続々と道行く人が集まり、踊り出す。果たして、こんなことありえるだろうか?この過酷な現実においては、路上で無許可で演奏しようものなら、たちまち警察が現れるのではなかったか(3

    坂元裕二『カルテット』5話 - 青春ゾンビ
    torakono
    torakono 2017/02/16
  • 坂元裕二『カルテット』4話 - 青春ゾンビ

    軽井沢の別荘にゴミが溜まっていく。なるほど、カルテットのメンバーは皆一様にして”捨てられない人”だ。たとえば、すずめ(満島ひかり)ならば同僚からの”出てけ”のメモを引き出しが一杯になるまで溜め続けていたし、巻(松たか子)は失踪した夫の下をそのままの形で保存する。別府(松田龍平)は長年の巻への片想い、家森(高橋一生)は別れた家族への想い、もしくは”アジフライにはソース”というこだわりを捨てられない。この捨てられなさは当然、”呪い”というイメージと結びついていることだろう。捨てられないゴミは腐臭を放ち、別荘の部屋に侵してくる。この”侵入”のイメージが4話のキ―である。ゴミに続いて、半田が、そして鏡子(の眼鏡)が、光太が、茶馬子が、次々に他者が別荘に侵入してくる。これまでカルテット以外に別荘に入ったのは、有朱だけ。しかし、それはすずめのみが在宅中の時であったはず。4人が揃った別荘に他者が侵入

    坂元裕二『カルテット』4話 - 青春ゾンビ
    torakono
    torakono 2017/02/12
  • 1