7.09.2014 断片的なものの社会学 第7回 他人の手 岸 政彦 第7回 他人の手 他人が嫌いで、ひとりでいることが好きだが、たまに、人の手が恋しいときがある。 * * * 見ず知らずの他人との身体的接触は、たいていの場合は苦痛をともなうものだ。都市で暮らしていると実感するのだが、人がいない空間というものがいちばん金がかかる。個室、グリーン車、ビジネスクラス、あるいはただ単に、テーブルとテーブルとのあいだにじゅうぶんなゆとりが確保されたカフェやレストラン。人がたくさんいるところで、人のいない空間を確保することが、いちばん金がかかるのだ。やっぱりみんな、他人の身体と一緒にされることが辛いのだ。 ときどき東京に出張したときの、あの電車の混み具合には、ほんとうに驚かされる。みんなよく我慢してるな、と思う。我慢しないと暮らせないので、我慢しないとしょうがないのだが。 * *