ユダヤ人を救った動物園 [著]ダイアン・アッカーマン[掲載]2009年9月20日[評者]松本 仁一(ジャーナリスト)■自殺覚悟でナチスを欺いた勇気 ナチス支配下のポーランド・ワルシャワで、動物園の園長ヤンと妻アントニーナが多くのユダヤ人をかくまった、その実話である。 ゾウやライオンなどの大型獣はすでに処分されていた。動物園はがらがらだ。ヤンはナチスに「兵士用の豚の飼育」を提案し、閉園をまぬがれる。ドイツ軍に豚肉を供出する一方、ゲットーから知人のユダヤ人を次々に連れ出し、空いているライオン舎などに隠していく。 豚がだめになると、次は「軍服の毛皮用」でタヌキ。動物園を閉鎖することなく、ユダヤ人をかくまい続ける。救ったユダヤ人は300人に上った。 かくまったユダヤ人に、彼らは動物の名をつけた。外部の人間に聞かれても、怪しまれずにすむからだ。有名な女性彫刻家マグダレーナ・グロスは「ホシムクドリ」だ