本が売れないのは、本を読まなくなったから——。ベストセラーが世間をにぎわせる一方、工作舎が刊行するような専門(教養)書は依然厳しい状況が続きます。実際、読者は離れてしまったのでしょうか? そこで、工作舎の本の愛読者Oさんに、本について、読書についてお聞きしました。Oさんは科学史(科学文化論)の若手研究者。アカデミズムは専門書を産み出し、消費する場でもあります。そこに身を置く立場から感じたことを語っていただきました。 ■専門(教養)書が売れない ——今の出版不況、特に専門(教養)書が売れないという状況について、研究者の立場からどのように思われますか? 危機感はすごくあります。なぜ本が売れないこと、本が読まれないことを憂いているかといえば、別に一億総白痴化でも学生の知的崩壊でも一向に構わないんですが、私の必要な本が読めなくなるのが困る(笑)。我々が必要としている研究書・専門書は売れる絶対数が少