2020年の東京オリンピックに向けて、受動喫煙対策を盛り込んだ健康増進法改正案、いわゆる禁煙法案の議論が行われています。その中で先日、麻生太郎財務相が「肺がんとたばこにそれほどの関係があるのか?」という趣旨の発言をしたことが話題になりました。喫煙率の低下に反して、肺がんの死亡率が下がっていないことへの疑問が背景にあるようです。呼吸器内科医で公衆衛生学が専門の和田裕雄・順天堂大准教授に解説してもらいました。 ◇喫煙率とがん死亡を考える三つの論点 日本の喫煙率は、男性が1960年代の約80%より減少し、現在約30%、女性は同20%弱から微減の10%程度で推移しています。一方、同じ期間の肺がん死亡数は一貫して増加し、93年以降は男性のがん死亡率の1位となりました。麻生財務相の発言はこの状況に言及したものでしょう。確かに喫煙は肺がんの原因であるにもかかわらず、喫煙率が低下しているのに、肺がんの