「視聴率は絶望的」と言われてきたNHK大河ドラマ「いだてん」が折り返し地点を過ぎ、ギアチェンジしたように見える。数字が上向いただけでなく、日本人女子初の五輪出場選手、人見絹枝が走った7日の放送には「号泣した」「神回だ」と賛辞が相次いだ。実はこのドラマ、ただものではない?【奥村隆】 ドラマ後半戦からの盛り返しは、この男の肩に懸かっている。6月30日放送(第25回)からの主役は競技者ではなく、「東京に五輪を招致した男」とされる朝日新聞記者、田畑政治(まさじ)。演じるのは阿部サダヲさんで、ドラマ音楽を手掛ける大友良英さんの評は「大河ドラマ史上、最高にせわしない主人公」。 確かに田畑はじっとしていない。欧州への選手団派遣を目指し、蔵相の高橋是清や大日本体育協会の幹部らを説得するために早口でまくし立てる。とにかく、せりふの量が多いのだ。