【社会部発・被災地から】 宮城県石巻市立渡波(わたのは)小学校を取材していたときのことだ。同校は校舎1階が津波にのまれながら避難所となっており、その日、男性タレントや女性歌手が慰問に訪れた。「本物だ!」とサインをせがもうとした子供たちは、案内役の職員に「時間が限られているのでできない」と拒まれた。 一人の少女はがっかりした表情を見せたが、恥ずかしそうに「サインして」と記者に近づいてきた。「有名人じゃないんだよ」と説明しても「いいの、集めるのが好きだから」と、真新しいドラえもんの表紙のノートを差し出した。 支援物資でもらったのだろう。パラパラめくってみると、どのページも真っ白だった。1ページ目にぎこちなくサインした。「大事にする」。顔を赤らめながら少女は言った。胸が痛んだ。 「いいもの、見せてあげる」。別の日、校庭で声をかけた4年生になる別の女の子は、和紙でできた花柄の小箱から金色の