◇一体感育てた「企業文化」 運営費以上の価値あった 社会人野球の名門・日産自動車(神奈川県横須賀市)の昨年限りの休部は、不況による企業スポーツ冬の時代を象徴する出来事だった。創部50年の09年、都市対抗野球大会と日本選手権大会で4強という輝かしい結果を残した。私は地元記者として取材した。ナインらのひたむきさも印象に残るが、それ以上に、収支の数字に示される「企業論理」だけでは測れない「企業文化」という無形の財産を、チームがはぐくみ続けていたとの思いが絶えることはない。 09年11月21日、京セラドーム大阪。日本選手権準決勝のJR九州戦は、事実上の最終戦となった。スタンドはチームカラーの赤で埋まっていた。「大げさかもしれないが、野球部をきっかけに愛社精神が育ったような気がする」。その一角で横浜工場勤務の中村明夫さん(56)はしみじみと語った。野球部の応援は入社以来35年。「工場の人たちと工場に