このように、「ことばで自分らしさを表現する」という視点から見ると、これまで、たんなる「一過性の現象」や「若者ことば」として片づけられてきたことばの使い方が、それぞれの話し手が、相手との関係を調整しながら自分らしさを表現しようと工夫した結果であることが見えてくる。拙著、『新敬語「マジヤバイっす」―――社会言語学の視点から』(白澤社)では、若者ことばだとみなされている「そうっすね」という言い回しの働きを取り上げている。 先述した『「自分らしさ」と日本語』では、小中学生女子の「うち・ぼく・おれ」以外にも、名前・敬語・方言・女ことばなど、さまざまな「ことば」による目からうろこの自分らしさの表現事例を見ている。また、ことばを変えることで職場の人間関係も変化させようという試みも指摘している。 私たちにとって、あまりにも身近な「ことば」であり、客観的に考えることが難しい日本語。そんな日本語の足りないとこ
