今朝、おかしなものを見た。はじめは幻覚だと思った。就寝前に服用した薬の副作用で視覚神経が麻痺しているのだと思った。そして、熱さを伴った目覚めだった。僕の前に現れたもの。異形。怒涛。空前絶後。超弩級。形容する言葉が見当たらなかった。次に僕は、目覚めない頭のなかを引っ掻き回して、類似物を見つけ出そうとした。複雑かつ秩序を保ち天空へと伸びる様はガウディのサグラダ・ファミリアに似ていなくもないが、地上にあるあらゆるものを破壊しつくしてしまいそうな底知れぬ力を内包したフォルムはむしろ先の大戦で使われた独軍の列車砲グスタフとドーラに近い。グスタフとドーラ。総重量1300トン。全長40メートル超。おそらく史上最大の陸上兵器。今後もこれ以上の規模の陸上兵器は登場しないであろう。滅び行く種族、恐竜の運命を想わせる。 予兆は真夜中にあった。夢と現実の境界。身体のまわりを薄い膜がうっすらと覆う曖昧な時間。寝返り