4. 日本の社会階層とその行方 (報告者:富永 健一委員) (1) 日本社会と社会階層 社会階層とは、人々の欲望の対象である社会的資源が、人々のあいだに不平等に分配されている状態をいう。日本を含めた世界の近代的諸社会で、所得や権力や威信が人々のあいだに平等に分配されている社会というものは存在しない。だからそれらすべての社会において、それらの資源のより有利な分配をもとめて獲得競争が行なわれており、その結果として社会的昇進又は下降(Social Promotion and demotion, sozialer Aufstieg und Abstieg)という現象が生起している。このことは、だれしもが認める基本的な社会的事実であるから、それらの近代的諸社会には社会階層が存在しているかと問われれば、我々はだれも、存在していると答える。そして日本社会もまた、これに