映画 『母なる証明』は『殺人の追憶』以上に「ホラー」らしい「ホラー」なんだろうと思う。というか、映画の『リング』もそんな感じだったが、女性が中心に来て探偵役を引き受けることが、「ミステリー」が「ホラー」に転化するきっかけを作る、のかもしれない。名探偵の「真実」を突きとめる合理的思考能力と、そこで突きとめた「真実」を正確かつ適切にギャラリーに説明する卓越した言語能力は、基本的には「男性的」と想定される資質であるがゆえに、女性には「そぐわない」ものとして付与されにくい。*1そして「母」は謎解きと説明を成し遂げうる論理と権威をそなえた言葉とは無縁のまま、荒涼たる意味の焼け跡にて、ひたすらユラユラと踊り続けるばかり―、と。 女性主人公とホラーの親和性について、『恐怖の臨界』の著者マーク・ジャンコヴィックはかなり肯定的な見解を示している、ように読める。 ……くりかえし女性を犠牲者の立場においているか