大きな森のそばに、木こりのふうふがすんでいました。二人の子どもがいて、兄(あに)はヘンゼル、妹(いもうと)はグレーテルといいました。畑(はたけ)でまったく作物(さくもつ)がとれなかったある年のこと。「はぁ…。とうとうたべものがこれだけになってしまった」。木こりがつぶやくと、おくさんが「こうなったら、子どもたちを森においてくるほかないよ」といいました。木こりの二ばんめのおくさんはとてもつめたい人で、子どもたちのやさしいお母さんはずっと前(まえ)になくなっていました。「わたしたち、森においてきぼりにされるの?」とふあんそうな妹に、ヘンゼルは「だいじょうぶだよ、グレーテル。ぼくがまもってあげるからね」といいました。〔語り:浜辺美波(はまべ・みなみ)さん〕 あくる朝(あさ)。「さあ、きょうは、まきをとりにいくよ。これがおまえたちのお昼(ひる)だ」。二人がもらったのは、ほんの小さなパンでした。森へ入