第4回 滝口浩史 「『狭間』という写真はひとつの使命を終えたとはいえるけど、 でも撮り続けるしかない、と思っています」 2004年度の写真新世紀で荒木経惟選によって受賞した滝口浩史さんの「狭間」という2枚組の写真を見た人は、きっと忘れがたい強い印象を受けたことだろう。そこに写っているのは危篤の病床にある母と娘の、最後の別れの光景である。その2日後に母親はこの世を去り、後に娘はその写真を撮った恋人と結婚し、その写真の撮影者である滝口さんは写真家となった。 この2枚の写真には、生と死、涙と笑顔、別離と抱擁という相反する要素が緊密に組み合わさりつつ、まるで映画における2つのカットのように劇的な瞬間を感じさせる。ぼくはこの写真を見て、痛切さを感じつつも作品としての巧みさに舌を巻いた。この写真の選者である荒木経惟がそうであるように、写真の力を最大限に発揮したもっとも写真的といいうる作品であると思った