■『断片的なものの社会学』(以後、『断片』と略す)は、分析も解釈もできない、ありきたりな、たわいもないような事柄について語られ続ける本だ。全裸のおじさんとの出会い、女性の背後をつける若者など、人々の小さなエピソードが魅惑的に語られていく(街を生きる「普通の人々」へのインタビュー集となる前著『街の人生』と相補的な著作といえる)。『断片』を読む人は、エッセイとも、ノンフィクションともいえないような独特の趣に魅せられることだろう。評者は、『断片』に魅せられた人々が語らされてしまう感想や評に、強く頷き、相槌を打ち続ける。しかし、一言そっと、付け加えてしまいたくなる。「この書は魅力的なエッセイでありながらも、何より全く、社会学の本だ」と。 社会学といえば、次のようなイメージを持つ人もいるだろう。「日常性を問い直す」「自明性を疑う」等々。一見して、魅惑的に思える。そして実際、社会学はそのようなイメージ