土曜日の電車の中は、いささか暖房が効きすぎて、ひどく乾燥していた。僕が車両の隅に体を押しこむようにして、咳をガマンしていると、女子高生の一団が乗りこんできた。 紺のブレザーを着た少女たちは、近所の高校に通う女子高生で、土曜日は不思議とおなじ車両に乗り合わせることが多い。 その中で、ひときわ目を惹くのは、朱華色のマフラーを巻く黒髪の少女だった。女優の高畑充希を思わせる、まっすぐな瞳が知性を感じさせる。 彼女が後ろをふり向くと、シャラとした髪がゆるく舞い、甘い香りがした。 電通問題に言及する女子高生寒さをものともしない短いスカートからチラと見える足が眩しい。僕は、さも無関心を装って、スマホに目を落としていた。 彼女たちは、空いた座席には座らず、それぞれに向かい合って立ち話を始めた。僕はそのまま目を上げずに、スマホの画面に見入りながら会話に耳をそばだてていた。 すると、不思議な単語が聞こえてきた