映画が旅の目的地だとしたら、映画館で出会う他の観客たちを、たまたま同じ目的地の列車に乗り合わせた、あるいは旅先で出会った他の旅人のように感じることがある。 2016年に巨大なヒットを記録した2つの映画、『君の名は。』と『シン・ゴジラ』の観客〈旅人〉はまるで別世界からやって来たように違う雰囲気だった。 カップル客やご年配の方から子供まで、まったく世代や文化の違う観客を楽しませた『君の名は。』に対して、大量の情報量と圧倒的なスピード感で新しい時代の怪獣映画を見せた『シン・ゴジラ』の客席は深く感応する観客と、情報の洪水の前にキツネにつままれたように帰っていく観客に真っ二つに分かれていた印象がある。それは「広さ」と「鋭さ」という相反する価値観のどちらに映画の方向性を定めるか、がもたらした鮮明な対比だった。 これも記録的なヒットとなった『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』の客席は、『踊