祖父の十七年の法要があるから帰れ――という母からの手紙で、私は二タ月ぶりぐらいで小田原の家に帰った。 「このごろはどうなの?」 私は父のことを尋ねた。 「だんだん悪くなるばかり……」 母は押入を片付けながら言った。続けて、そんな気分を振り棄てるように、 「こっちの家はほんとに狭くてこんな時にはまったく困ってしまう。第一どこに何がしまってあるんだか少しも分らない」などと呟(つぶや)いていた。 「僕の事をおこっていますか?」 「カンカン!」 母は面倒くさそうに言った。 「ふふん!」 「これからもうお金なんて一文もやるんじゃないッて――私まで大変おこられた」 「チェッ!」と私はセセラ笑った。きっとそうくるだろうとは思っていたものの、明らかに言われてみるとドキッとした。セセラ笑ってみたところで、私自身も母も、私自身の無能とカラ元気とをかえって醜(みにく)く感ずるばかりだ。 「もうお父さんの事はあて