僕は『鬼滅の刃』に乗れなかった。マンガを全巻読み、映画も観たが何故ここまで売れたのかよくわからなかった。周りの同年代(アラサー)マンガ読みと話をしたとき、皆作品の質が高いことは認める。が、何故ここまで売れたのか、また多くの人間が何故面白いと感じたのかはわからないと言う。先日、妻と友人とでこの件について話をしたところ、この問題に関する輪郭が少しつかめてきた。『鬼滅』は何故売れたのか。何故乗れない人は乗れないのか。その背景にある作品の欠点・限界とは何か。これらを書こうと思う。 まず、『鬼滅』は何故売れたのか。未就学児や普段マンガを読まない層を取り込むことが出来たからだと思う。何故それが出来たか。アニメ版の質が極めて高かったことや感情描写が細やかだったこともあるだろうが、別の点について指摘したい。思うにこれまでの少年マンガのセオリーを破り、大胆にストーリーを簡略化したからだ。鬼殺隊は絶対善であり