近代日本美術の知られざる先駆者・川村清雄(かわむらきよお)(1852─1934)──近年とみに評価が高まっている幻の洋画家です。 本展は、今回はじめてフランス・オルセー美術館から里帰りを果たす晩年の傑作《建国》や、勝海舟(かつかいしゅう)に捧げられた《形見の直垂(ひたたれ)》をはじめとする代表作や初公開作品を含む約100点の絵画が一堂に会する最大規模の回顧展です。 清雄は黒船来航前夜の江戸に、旗本の子として生まれました。明治4年という極めて早い時期に徳川家の援助を得て留学、ヴェネツィア美術学校で優秀な成績を収めます。しかし、帰国した清雄を待っていたのは、フランス美術の強い影響に染まりゆく日本洋画壇でした。清雄の修めたイタリア伝統の油彩画法は時流に容れられず、やがて清雄も画壇に背を向けることとなります。 その後の清雄は、勝海舟や徳川家達(いえさと)など良き理解者の庇護のもと、日本人独自の油絵