野崎まど著『ファンタジスタドール・イヴ』(早川書房、2013年)はアニメ『ファンタジスタドール』(斎藤久監督、フッズエンタテインメント制作、2013年)の前日譚だ。内容は女性に幻滅した科学者が、それでも女性を欲し、志を同じくする友人とともに人造の女性を創造するというものだ。自身も製作に参加するかという異同はあるが、これはヴィリエ・ド・リラダン著『未来のイヴ』(1886年)と同じ筋書きだ。タイトルをはじめ、『ファンタジスタドール・イヴ』は『未来のイヴ』を援用しており、結末に明確な対照性がある。以下、それを検討するとともに、その対照をもとに『ファンタジスタドール』を再論したい。 『ファンタジスタドール・イヴ』で主人公の大兄太子は幼少期にミロのヴィーナスをみることで、女性の肉体への憧憬をおぼえる。「連れて行かれたのは、世界で最も有名な美術館、ルーヴルだった。(中略)だが、私は、それに強く魅入られ