山で判断を迫られる際に、やってはならないことの1つが「思い込み」。自身に都合の良い天候判断が大きな事故を招いてしまった――、そんな一例の1つ、2002年のトムラウシ山遭難事故を例に、気象判断について考える。 ヤマケイオンライン読者の皆様、山岳防災気象予報士の大矢です。関東上陸直前に「非常に強い」勢力にまで発達した台風15号は、関東に接近・上陸する台風としては異例の勢力を維持したまま東京湾を北上し、9月9日(月)の5時頃に千葉市に上陸、暴風により多くの電柱が倒れて停電が続くなど甚大な被害を与えています。被害を遭われた方には謹んでお見舞い申し上げます。 今回のコラムでは、2002年7月の台風6号によるトムラウシ遭難事故について取り上げたいと思います。トムラウシ遭難事故と言えば2009年7月の大量遭難事故があまりにも有名ですが、その7年前にも名古屋と福岡の女性2名が低体温症で亡くなられるという痛