「こんなところで何してるの?」 「それはこっちの言うセリフさ。きみこそ何しに来たんだ。まさか、高級ワインをしこたま買い占めるためじゃないだろうな」 と言って、ダニエルは手に持ったボージョレ・ーヌーボーが入った瓶を口に運んだ。 「ダニエル。1つ教えてくれる? あの研究は続けているんでしょ」 「……」 ダニエルは急に顔をこわばらせて黙った。 「やはりね。私も研究者だから、あなたがペテン師ではないことくらい分かる。それに、あの研究は世界を変えるかもしれない。だから1つだけ答えてほしいの。今でも研究は続けているの?」 すると、ダニエルは重い口を開いた。 「研究を続けているかって? やめたいよ。こんな生活はもうこりごりだ。でも、どうしてもあきらめきれないんだ。だから、毎日同じことを繰り返している」 「つまり研究ノートをつけ続けているってことね。よかったら、私に見せてくれないかしら」 「高級ワインを買