昨年12月、溝口力丸氏が「SFマガジン」編集長に就任した。溝口氏は、担当した同誌の百合特集や伴名練『なめらかな世界と、その敵』をヒットさせるなど、SFに新風を吹きこんできた。その編集者としての歩みと「SFマガジン」の未来について聞いた。(円堂都司昭/3月9日取材・構成) 『SFマガジン 2022年 4月号』 ――出版界に入る前の読書傾向は。 溝口:大学では都甲幸治先生に現代アメリカ文学を教わり、トマス・ピンチョン、リディア・デイヴィス、ジョナサン・フランゼンなどを読んでいました。また、小学生の頃からエッセイが好きだったので、さくらももこから入って遠藤周作、北杜夫、佐藤愛子、内田百閒。現在との接点をあげるなら筒井康隆、小松左京もけっこうエッセイを書いていたし、星新一のショートショートはみんな読んでいましたから、そこらへんがSFとのファーストコンタクトでした。星新一訳のフレドリック・ブラウンの