シリアとイラクで勢力拡大を続ける武装組織イスラム国。シリア北部のアイン・アル・アラブ(コバニ)は町全体を包囲され、制圧される危機にある。このため近隣地域を含む住民7万人以上が、避難先を求めてトルコ国境に押し寄せる事態となっている。トルコ政府は人道措置として限定的に国境を開放したものの、まだ多くの避難民が安全な地域に出られない状況だ。 【解説:坂本卓・写真:玉本英子】 ◆クルド組織が狙われる背景 シリア北部には国民の1割にあたる200万前後のクルド人が多数暮らす。長年、アサド政権は民族独立志向の強かったクルド人を警戒し、厳しく弾圧してきた。2011年、反政府運動が全土で広がると、クルド人居住地域の町の多くでクルド組織が台頭し、いくつかの地域を掌握。アイン・アル・アラブでは2012年、アサド政権の政府軍が撤退し、これに代わってクルド政党、民主統一党(PYD)と防衛組織、人民防衛隊(YPG)