天沢退二郎が、ひたすらにママチャリをこいでいる。彼が暮らす千葉chibaをフランス語読みしたシバを死場、詩場と読みかえ、彼はペダルを踏む。自転車がはしる。終わりも目的も拒否する、エンドレスなロードムーヴィーのように。 本作冒頭、天沢は、詩人なんて正体を見せたくないと語る。なかば、自分探しなどくだらない、そんなものはないのだと静かに語気をつよめ、ラストには「天沢さんは詩人ですか?」という問いに対し、「詩人はどこにいる?/詩人はね、ほら、/詩の言葉の、ちょうど/すぐ斜めうしろのところで/ふっふっふっふっ/と笑っているよ」「あのわらいごえだけが《詩人》さ」と一九七六年の詩集『les invisibles 目に見えぬものたち』の一節を読む。一貫しているのだった。 公園の遊具にたわむれ、ママチャリをこぎ、半廃墟ともいえる「通信所跡」で詩を朗読し、また自転車にまたがり、舗装の粗い砂利道、「砲台跡」、「