「これからは、ブックマークは『お気に入り』と呼ぶこととします」 ……大学時代、Windows95を初めて見た時の衝撃は今も忘れない。マイクロソフトの、あの高らかな宣言に、私は眩暈を覚えた。「お気に入り」! 「お気に入り」だと! あの頃の私は精液の香りをぷんぷん漂わせた童貞文学青年であり、恥ずかしげもなく美意識なんてものを振りかざしていた。そしてその青臭い美意識は「お気に入り」を許さなかった。「このズボンは僕のお気に入りさ」「最近ちょっとお気に入りの女の子がいてね」……そんなのは私から言わせれば、わたせせいぞう以外の人間が使ったらその場で『荒涼館』のクルックのように燃え上がってしまっても仕方がないような言葉だった。ゲイツはユーザーフレンドリーのフレンドさを明らかにはき違えていた。お前とは絶対フレンドになれない。それがWindowsへの第一印象だった。 そのくせ、「設定」とか「情報」とかで良さ