「記者はおのれを権力と対置させなければならない」 戦後の日本を代表するジャーナリストは? と訊かれたら、私は即座に3人の名を挙げる。 読売社会部出身でノンフィクション作家になった本田靖春さん。大阪読売社会部の「黒田軍団」を率いた黒田清さん。朝日の天声人語で洛陽の紙価を高めた深代惇郎さんである。 そのうちの一人である本田さんは生前こう語っていた。 「記者はおのれを権力と対置させなければならない。これは鉄則である。権力の側に身をすり寄せていけば、そうでなくとも弱い立場の人びとは、なおのこと隅っこに追いやられる」 いい言葉だなあ。最近とみにそう思う。70年間平和だった日本が戦争に向け舵を切る。その転換点に遭遇した一記者として何ができるか。途方に暮れたらこの言葉を呟いてみる。すると、迷いが吹っ切れる。 たとえ無力であっても、自分が今いる場から異議申し立てをしなければならぬ。後で「あの時、こう言えば