今、一冊の本が手元にある。「将棋紳士録1974年版・10周年記念号」。定価はない。発行元は将棋紳士録発行会。そして監修は一人の棋士、斎藤銀次郎八段。 この本は、全国の初段以上の有段者の氏名と住所が記されている。個人情報そのものであり、現代では発行できるはずもない。いわゆる紳士録だ。紳士録の常として、紳士じゃない人がご愛用する本である。ページを繰ると驚くのは、内閣総理大臣田中角栄からのお言葉と色紙の写真が掲載されている。「静観自得」と書かれている。「静観」は角栄的ではないが、「自得」は角栄的だ。そして、目白区のリストの一番上には、「六段 田中角栄」と書かれている。 また、大蔵大臣(福田赳夫)はじめ多くの議員や警察庁長官、日銀総裁、経済界やその他の名士の方が五段、六段と記されている。最高七段の方は、○○○製鉄の方で、その社の会長でも六段なので、何か特別なのだろう。そして、それらの方が実力で五段