「なあ、清悟。今まで、いろいろあったな」 その口調は意外なほど穏やかで、優しかった。まるで夢破れ、疲弊しきって家に帰ってきた我が子を、慰めるかのようでもあった。ゆっくりと、諭すように、こう続けた。 山本清悟氏と山口良治氏(2006年時) 写真=山口良治氏提供 「お前はもう、本当にラグビーを捨ててしまうんか」 「高校に入学して、初めてラグビー部に誘った日のことを、覚えているか。俺はお前と一緒に、ラグビーがしたかったんや。お前とならば、一緒に目標を持ち、夢を叶えられるんやないか、そう思ったんや。 なあ、清悟、覚えているか。遠征の時に、お前に大きなおにぎりを渡したことを─。もう、忘れてしまったんか。母さんと離れて暮らしているお前は、もしかしたら、弁当を持って来れないんやないかと、俺はいらん心配をしたんや。それで、持っていったんやで。 お前とラグビーをした3年間、俺は幸せやった。どうしようもないく