(前回から読む) ―― 前回は、ゲーム理論が導き出す解の多様性をめぐり、「多様性があっていい」と、前向きにとらえる立場についてお聞きましたが、別の立場の考え方もあるようですね。 安田 もう一方の考え方は、理論を改善して「答え」の基準をより厳しくすべきだという立場です。きちんと理論を修正することで、当てはまりが悪い「答え」を排除し、できるだけゲーム理論の予測能力を高めようというわけですね。1970~80年代にかけて、多くのゲーム理論研究者がこの問題に取り組みました。 参加者の予想の仕方に制限をつけたり、相手が戦略を間違えるリスクを考慮に入れたりと、色々なアプローチが試されました。 しかしその努力もむなしく、複数均衡の問題を劇的に解決する理論は見つからなかったのです。ゲーム理論の予測にも結局限界があるのだという、ある種の諦めムードが漂いました。 より現実的なシナリオを想定した新たな理論が登場