大きな反発がありながらも、プーチンが大統領に返り咲いたのはなぜなのか。朝日新聞元モスクワ支局長の副島英樹さんは『屈辱の90年代』を恐れたロシア国民が『自由』を制限されても『安定』の方を優先し、それがプーチン支持の基盤になっている」という――。 ※本稿は、副島英樹『ウクライナ戦争は問いかける NATO東方拡大・核・広島』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。 ロシアの「屈辱の90年代」 ソ連末期のペレストロイカ(改革)からソ連崩壊を経て、混乱する社会経済状況を引き継いだ新生ロシアのエリツィン大統領は、民主化の号令のもと、「ショック療法」と言われた急進的市場改革を進めた。それが「オルガルヒ」という新興財閥の台頭を招き、その影響力は政治をゆがめていく。 医療費や教育費、家賃などの負担がのしかかるようになった庶民は「弱肉強食の資本主義」を味わわされ、デノミ、給与遅配・未払い、汚職の蔓延などの