――『窓ぎわのトットちゃん』の原作が発表されたのは1981年です。世界中で愛されるベストセラー小説ではありますが、なぜ今、このタイミングで映画化しようと思ったのでしょうか? 八鍬 じつは、僕が初めて原作を読んだのはわりと最近で『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』の作業を終えた2016年頃ですね。ちょうど自分が親になったこともあって、ふと「この子たちが大人になる頃、この社会はどうなってしまうんだろう?」と思ったんです。当時、海外ではシリアの内戦が激化し、国内でも虐待事件が報道されることが多くて、すごく不安でした。僕が普段、手がけている『ドラえもん』シリーズのような、王道のエンタメ作品ももちろん必要ではあるんですけど、もっと現実とリンクしていながら、明るい光が射し込むような作品を作りたいなと感じたんです。そこで原作になりそうな本を手当たり次第に読んでいたときに、たまたま見つけたのが『窓ぎわ