ミュージシャンからリスナーまで、ポピュラー音楽というものになにがしか関わっているすべての人にとって必読書であると申し上げてよいのではないかと思います。 「巨大産業をぶっ潰した男たち」と副題に添えられていることからわかるとおり、タイトルである『誰が音楽をタダにした?』の「誰」が指し示しているのは、比喩的な犯人ではない。つまりこの手の話にありがちな「mp3が」とか「インターネットが」とか「ナップスターが」といった具合の技術や状況や環境が漠然とした犯人としてあげられているのでは、ない。 「誰」はきわめて具体的に指名されている。主犯は3人だ。 mp3という技術を生み出したエンジニア、カールハインツ・ブランデンブルク。 1990年代以降現在まで世界の音楽業界の頂点に立ち続けているエグゼクティブ、ダグ・モリス。 そして、ノースカロライナ州キングスマウンテンという片田舎のCD工場で働いていた作業員デル・