5月10日、問題の日。 僕は自分の家から徒歩5分のマンションを仕事場にしている。そこに執筆に必要な書籍を溜めこんでいるのだ。『BISビブリオバトル部』や、『神は沈黙せず』『MM9』『プロジェクトぴあの』などの参考文献リストを見れば分かる通り、常に大量の本に囲まれて執筆している。 その日は朝から何かがおかしかった。いろんな打ち間違いをしていて、ちっとも原稿が進まない。そのうち、異変がさらに進行しているのに気付いた。 使い慣れているはずの、WORDの使い方がよく分からなくなっているのだ。 その時になっても、僕は事態の深刻さに気づいていなかった。身体のちょっとした変調で、ひと休みすれば治るといった程度に軽く考えていた。 あとから思えば、脳の正常な判断力が失われていたのだ。 尿意を催し、トイレに行きたくなった。その時にようやく、肉体にも異常が起きているのに気づいた。身体のバランスが取れない。ドアの