『編集者という病い』(見城徹著・太田出版)より。 (「伝説の編集者」(現・幻冬舎社長)見城徹さんの新米編集者時代のエピソード) 【三十数年前のこと、新卒として入社した慶済堂出版の一年目に、『公文式算数の秘密』という当時の大ベストセラーを企画編集しました。リライトも自分でやりました。その本のことを考える度に、それが編集者一年目の本であるとともに、自分の原点たる内容をもっていることに我ながらびっくりしています。それは偶然かもしれませんが、実は僕のその後の道筋を定めるような内容であったのです。 就職一年目のある昼下がり、ガールフレンドと新宿御苑の前を歩いているときに、正門前に白鳥ビルという雑居ビルがあり、そこの確か奇数階のフロアーに「公文式算数研究会」という看板があるのに気付きました。その時は「クモン」と読めず、「何だろう、このコウブン算数というのは」と思いました。それから二週間ほどして、新聞の