中沢新一著『人類最古の哲学 カイエ・ソバージュⅠ』講談社選書メチェ 中沢新一氏による講義録、全5冊。その第1冊を再読。神話を人類史上最古の哲学として紐解き、その独自性と内部に抱え込まれた矛盾を明らかにしながら、「哲学」という言葉に野生の生命を回復させようとした思考の冒険。 「人間ははじめにしか本当に偉大なものは創造しないものです」と中沢氏はいう。その「人間のはじめ」とは、現生人類(ホモサピエンス・サピエンス)が現れた三万数千年前にまで遡る。それまでの動物や原人とは異なり、前頭前野(過去記事)を高度に発達させた現生人類は、それまで地球上には存在しなかった特異な思考回路を獲得し(その回路は「心」と呼ばれている)、脳内に蓄積した知識を神話というかたちに組織化できるようになった。これが人類最古の哲学である神話の成り立ちである。 『あらゆる神話には、ひとつのめざしていることがあります。それは空間や時