「共同幻想」「大きな物語」「エクリチュール」といった現代思想の概念をわかったつもりになっていませんか? それらをきちんと理解するための1冊、6月刊『現代思想の名著30』の「はじめに」を公開いたします。 二一世紀の一〇年代も後半になった現在、「現代思想」という言葉はかなり曖昧になっている。単に、最近流行している思想とか有力な思想という意味でしか受け止めていない 人も少なくないだろう。しかし一九八〇―九〇年代の日本では、「現代思想」にはかなりはっきりしたイメージがあった。[現代思想≒ポストモダン思想]という理解がかなり一般化していた。 「ポストモダン」というのは多義的な言葉だが、哲学史的な文脈に限定すると、デカルトに始まる、「自我」あるいは(自我を基盤とする)「主体」を中心に据えた近代哲学の枠組みを解体する、あるいは、それと別の枠組みを探究する、新しい思考の系譜、という意味になるだろう。大学な